2015年 10月 01日
アベニールの配達人 - 秋野ノカゴWeb漫画サイトのCOMICリュエルで掲載されていた。更新を楽しみにしていた漫画。今回は紙の書籍で読む。登場人物が多くても、各人の背景が見て取れるし、お菓子の要素もバランスがよくて読みやすいな。 pic.twitter.com/g224e9cJ5g
— とりあえずテストテスト (@tztsts) 2015, 9月 22
最近買った漫画をツイッターでつぶやいてみようとふと思い立ってつぶやいた。それでこのツイート、とても失礼な誤りをしていた。
このブログに感想を投稿しよう、とその前に、
ネット上である程度情報収集を、とツイートの反応も辿らなくてはと。
すると、著者によるリツイートとともにこのようなツイート。
ありがとうございます!!!(*´_ゝ`)あと、わたくしの名前は「秋野ノガコ」でぇぇす!!!でもありがとうございます!!! >RT
— 秋野ノガコ◆単行本発売中! (@osenkogami) 2015, 9月 23
お名前を間違えました。申し開きのしようもありません。失礼しました。
この漫画はWebコミックのCOMICリュエルに掲載。全6話。
紙の書籍や電子書籍でも刊行されていて、
現在(2015年10月)でも第1話はウェブ上で読める。
続くのかと思ったら『アベニールの配達人 完』と単行本の最終回の最後に記載があった。
残念だけれども、
おいしいお菓子は、ほどほどに味わってやめておくのがいいのかもしれない。
さて、このお話は1800年ごろのパリで、
アベニールという名前の菓子店を舞台にしている。
題名に配達人とある通り、表紙に出ているのがそのお菓子の配達人、ルカ。
人情あふれるコメディで、気負い立つことなく楽しめる漫画。
ところで、この漫画の第一の印象は読みやすいということ。
それは、思いの丈を言葉にしすぎない、
でも、それらが源泉となる言動が描かれているということ。
第1話で示すとすると例えば、
5歳の少女カリーヌがドラジェ(菓子)にときめいたり、走り出したり、泣き出したり、
空腹で倒れベッドにいるカリーヌに「腹へってる時ほど お菓子は特に美味いもんだよなぁ!」(25ページ)
と嬉しそうにお菓子をすすめてしまうルカの姿形などに端的に表れていると感じる。
それに加え(読み手に見せる)視点の高さや角度、
顔だけを大写しにするか、逆に遠くから眺めるように見せるかといった寄ったり引いたりの具合、
そうして並べられたコマが情景になっているということ。
言葉にしなければ判然としない事柄は当然存在する。
しかし必要以上に語りすぎて、
作り手の伝えたいことを逐一代弁させているかのような、
そんな息苦しさを感じてしまうことがある。
しかし、この漫画からはそういうものを感じない。
読みやすいとツイートしたのはこういうことである。
この物語の登場人物たちは生き生きとしている。
特に、アベニールの店の人たちは優しくて生き生きとしている。
毎回、お菓子が登場するけれども、その解説は1ページ程度で簡潔。
また、第1話を数ページ読めば、配達人のルカの自由闊達さが見て取れる。
ルカは飛び跳ねていて、ベルナールはその逆に沈着だけれども影があり、
カリーヌは可愛らしく、店主のジョルジュは甘いお菓子に似合わないやや堅物な風格。
そんな人たちが揃うアベニールという菓子店。
それから、店の中だけではなく、
街のあちこちを舞台に、困りごとを目にしては解決していく。
大人の視点の中に混ざって、子供であるカリーヌの視点があることで、
ごく自然と、何気ない風景の中にも変化が出ていて面白い。
第3話。お菓子作りの手柄を先輩のシスターに奪われているシスター。
ルカたちに身の上を語る85ページ左上と、92ページの対決を挑むかのようなコマ。
寂しさのある同じような背景ながらもこの対比は印象的。
その間にある、90ページのすました顔。ちょっとしたどんでん返し。いいものである。
そういえば初めて表紙を見た時には、アニメのようだという印象を受けた。
色の塗り方や影のつけ方もあるけれども、
ひとつの動作が始まり終わる、
そのどこか中間で静止させた姿によるところも大きいのではないか。
漫画の中身を把握して改めてこの表紙を見ていると、
映像表現と呼応するような漫画の画面作りをしているのかもしれない、
そんなことを感じている。
ともあれ、明るかったり、影があったり、可愛かったり、いかつい感じだったり、
様々な人たちがちゃんとひしめき合っている姿というのは見ていて楽しい。
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by excdaite
| 2015-10-01 23:59
| マンガ(主に一巻完結や短編もの)